論文・レポートのやさしい綴り方

 学術論文をどう書くか


     OBE Accounting Research Lab

                岡部 孝好



 はじめに

 大学、大学院などの高等教育機関では、科目を履修するとレポートの提出が要求されれます。またコース の修了にあたっては卒業論文、修士論文、博士論文などの提出が必須とされています。これらのレポートや論文は 学術論文であり、その書き方には、決まりきった「作法」があります。 ここではこの作法を中心に、学術論文の綴り方をやさしく解説することにしましょう。

 レポートや論文を書くときには、最初に何のことについて、どう書く のかを決める必要があります。これが テーマの設定となりますが、このテーマの設定を行うためには、関連する著書や論文を多数読んで、その論点を整 理して、ノートを作成することが大切になります。しかし、この文献収集と論点の整理はゼミの先生のご指導を受 けることですし、最終的なテーマの選定もゼミの先生の専門的なご判断を仰ぐ大切なことがらです。ここでは、これ らの実質問題に立ち入る余裕はありませんので、ゼミの先生にご相談ください。

 ここで取り上げるのは、学術論文のスタイルにかんすることです。レポートとか論文をどういうふうに仕上げ ていくか、その形に絞って述べることにします。学術論文のスタイルには、自然科学系の学問分野と社会科学系の 学問分野とでは大きな違いがあります。以下に解説するのは、社会科学系の学問分野のケースで、修士論文 を想定しています。レポートになると、サイズが小さくなり、作法も簡略化されるところがありますが、基本は同じです。

 論文の組立てと目次の書き方

 論文には最初に表紙があり、次に目次があります。目次の次から 本文が始まり、最後に参考文献のリストとなります。 これらの全体を綴じ込みますが、本文にはページ番号が振られます。表紙には、論文のタイトル(テーマ)、学番・著者名、 提出科目名、担当者名などが配置されますが、この表紙への記載事項については大学から指示があるのがふつうです。このほか、 大学によっては、最初に1ページ程度の「要約」を付けることを要求しています。

 論文の全体の成立ちを示すのが目次です。このため、 目次をどのように組み上げるのかがきわめて重要になってきます。

 論文の全体をどう組み立てるのかは、論文のサイズによって違ってきます。小さな論文では3章程度の構成になりますが、 大きな論文では7-8章の長い構成になります。しかし、5章構成が最も標準的で、この5つの 章の中で、順を追って、整然と議論を 展開していきます。起承転結という論理展開が最も基本的ですが、最近では「承」にあたる部分において、特に1章を割いて、 先行研究のリビューを詳しく行う例が増えています。たとえば、次のように、5つの章を構成し、最後に参考文献を掲げます。

 最初の章では問題提起をして、議論の口火を切ります。何が問題で、その問題をど ういう角度から取り上げるのかを説明 します。最近では、この最初の章において結論がどうなるのか、どこにこの論文のユニークさがあるのかなど、全体の議論の大筋を示している ケースが多くなっています。また、論文全体の構成に触れ、議論のおよその成立ちもこの最初の章で明らかにし ておきます。

 最後の章においては、全体の議論を要約し、結論をてぎわよくまとめます。何をなしえて、何をなしえなかったのかを整理 して、将来に残された課題を列記するのも、この最後の章の重要な役割です。

 末尾に必ず掲載する必要があるのが、参考文献のリストです。この参考文献リストの書き方については、別途解説します。

 各章においては、その中を「」に細分化し、各節のタイトルを付けます。また各節においては、 その中を「」に細分化 して、項のタイトルを振っていきます。このため、章⇒節⇒項と細かく分化していくことになりますが、この細分化は適度のレベ ルに止めます。あまりの細かく分けすぎると、その中に書かれた本文が短くなって、タイトルばかりが並ぶことになるからです。

 章、節、項ともに番号を振って区分しましが、その番号の振り方にはいくつかのスタイルがあります。全体が5章の構成にな っていて、2章、3章、4章が節、項に細分化されている場合について、目次の書き方を いくつか例示します。章節項の構成の例へ

 文献の引用の仕方

 論文を書いていく場合、いきなりワープロを立ち上げ、思いつくままに文字を打ち込んでいくのは賢明なやり方とはいえません。 集めた文献をていねいに読んで、その中で借用できるアイデアなり表現などを、まず細かくメモしておきます。 そのとき、面倒でも、 そのメモがどの文献の何ページのものなのかも、あわせてメモしておきます。論文を書くには、このメモをたくさん溜め込むことが必 要です。これが、ノート作りの大事なステップです。

 論文を書くということは、順序だてて議論を展開することです。このため、どの話とどの話をどういう順番に並べていくかが重要に なってきます。ストーリーの組み立てを行い、反復がないように、順序よく話をつないでいきます。 読者を引き付けるという配慮も必要なわけです から、結論にいうべきことを前の方に出さない工夫も大切です。落語において、オチが最後に廻されるのと同じことです。

 およそのストーリーが固まったら、文字を綴っていく運びになりますが、このときに重要になってくるのがメモです。文章化していく 場合には、必ずメモを見て、メモを参照しながら、ていねいに文章を綴っていきます。

 文章化していくときに使うメモは、もともとは他人の書いた文献を調べたときに、その文献を抜き書きしたもので、自分が発案した ものではありません。オリジナルの原著作者は、参照した文献を書いた人です。いい換えると、メモに書かれて いる内容は他人のもので、自分のものではないのです。それなのに、あたかも自分が考え出したかのように、そのまま書いてし まうと、ドロボーになってしまいます。盗作、剽窃(ひょうせつ)というのは意図的に他人の文章を盗む犯罪を指しますが、他人の文章をマ ル写しにしても、結果は同じです。

 論文、著書に書かれている文章は最も基本的な知的財産権であり、著作権として法的に保護されています。したがって、たとえ一部 でも、他人の書いた文章を使用する場合には、厳格にいえば、原著者の許諾が要求されることになります。原著者の許可を受けずに、その 文章を使用すると、盗用になって、著作権の侵害にあたるからです。

 学術論文を書く場合においては、著作権の許諾を受ける手順が著しく簡略化されています。著作権にこだわりすぎると、学問の進化が 遅れてしまうからです。学術論文を書く場合には、原著者にいちいち許可を受けずとも、「だれの書いた、どの文献の、何ページから借用し た」と、単に言及するだけでよいとされています。この言及の手順を「引用」と呼んでいます。

 論文を書きながら、いちいち先行研究を引用するのはかなり面倒な作業です。しかし、この引用のテマを省くと、「盗んだ」ということ になるわけですから、文献の引用はきわめて重要な意味をもちます。先行研究を精密に調べて、この部分はだれの研究によったと、感謝を込め て引用するのが、礼儀というものです。

 最初にメモを作成する段階で、この引用の準備をしておくことが大切です。メモの作成にあたり、 その出拠出典を書き留めておかないと、いろいろな文章が入り混じってきて、結局のところ、正確な引 用ができなくなってしまうからです。

 引用には本文中で原作に言及する場合と、脚注において言及する 場合とがあります。その具体的なやり方については、 文献引用の例示において説明します。

 
 脚注の書き方

 脚注というのは、本文のページ下隅に、やや細かい文字で文章を書き足し、本文を補足することをいいます。 本文のページ下隅を使う代わりに、 各章の章末に脚注をまとめて収容するケースがあるほかに、本文の全体の末尾(本文と参考文献の間)に脚注をまとめることもあります。古い書籍 では、本文の中で、近隣のパラグラフとパラグラフの切れ目に、細字の脚注を挟み込むスタイルが使われていましたが、このスタイルは最近ではほ とんど使われていません。

 本文において議論が展開されているのに、わざわざ脚注を使うのは、本文に関係はあるものの、やや重要度が低い からです。重要が低いことは、本文から外す方が論旨がすっきりします。本論に直接に関係ない副次的な話は本論から締め出し、脚注に収容して おくと、議論の展開がスムーズになります。

 重要で不可欠な議論は本文の中に書かれなければなりませんし、無関係な話は脚注にさえ書く必要がありません。本文には書かなくてもよいこ とであっても、関連情報として重要な意味をもつことが、脚注に書かれ、読者に伝えられます。このため、 本文に書くのか脚注に落すのかの判断は きわめて微妙になって、脚注が多い論文とそうでない論文に分かれてきます。しかし、一般的にいえば、脚注が多い論文は、細かい議論をていねい に取り扱っており、クオリティが高いと評価される傾向があります。

 脚注には各章ごとに(あるいは論文全体で)一連番号を振り、その番号をカッコに括って、上付きの小文字で、本文の該当箇所に書き込みます。 これが参照元です。それぞれの一連番号に対応する形で、脚注を記述していきますから、参照元と参照先の脚注は必ず1対1に対応します。この対応 関係が崩れていると、エラーがあることになります。

 脚注において取り上げられる事項は多数考えられます。しかし、次が、主要な項目です。

  本文に記述されていることの引用文献を示し、出拠出典、参考文献などを明らかにする。

  本文の記述内容を補足し、法的根拠、異なる学説、代替的処理法などが存在することを説明する。

  本文に記述した内容についての歴史的経緯、実際の事例などを説明し、本文の説得力を補強する

  本文に説明されている統計量などについて、サンプルの分布などの補助的テストの結果を報告する。

 専門書や学術論文を読んで、それを参照しながら、自分の文書を綴るのが論文ですから、どの専門書や学術論文から アイディアや表現を借りたかを必ず明示することが必要になり、再々にわたって引用を行うことになります。この引用は 本文の中で行う場合と、脚注の中で行う場合があるというのは、前の節で述べたことです。しかし、本文というよりも脚注を中心に 、細かく引用するとすれば、引用のスタイルが少し違ってきます。脚注において、細かく引用するケースについて は、脚注における文献引用の例示において説明します。

 脚注において本文を補足するスタイルは、さまざまです。 脚注で本文の議論を補充する例をいくつか示します。

 図表の扱い方

 (または図表1つにまとめて)には 一連の番号を振り、 それぞれにタイトル(キャプション)を付けます。そして、最も見やすい位置に、貼り付けます。 やや古い慣行ですが、図や表を配置する位置に「第XX図を挿入」としておき、第XX図そのものは論文の末尾に、他の図表とともにまとめて収容するス タイルもあります。

 図や表はあまりに大きくならないように、そのサイズを調整します。最近ではカラーのグラフを使う例が増えてきていますが、学術論文です から、過度に飾る必要はありません。

 回帰係数、相関係数などを示す表では、変数の定義、回帰モデル、サンプル数などの関連統計情報を表に付加する ことが不可欠です。

 表やグラフの作成に使った原データの出所は、表やグラフに必ず書き込む必要があります。この原資料の出所を書かないでよいのは、自分の足 で調査し、自分で数値を集計した場合だけです。

 参考文献の書き方

 論文の末尾には参考文献が掲げられ、本文、脚注で使われたすべての文献がリストアップされます。

 この参考文献リストには、論文の中で引用された文献がすべて含められます。そのほか、論文の中では言及されていないが、論文を仕上げる 過程で参照された文献も、この参考文献のリストに列記されます。このため、この参考文献のリストは引用文献のリストよりも長くなります。

 参考文献の掲載スタイルには決まり切った形があり、自由なスタイルは許されていません。社会科学分野の中でも、専門領域によって多少の ばらつきはありますが、それぞれにおいて「作法」が決まっていますので、それに忠実にしたがう必要があります。

 参考文献のリストがどれほど長いのかは、論文評価の重要なポイントになります。よく勉強して、大汗をかいた論文では、その作成にあたり多 数の文献が参照されているはずです。ほんの2-3本の参考文献しかリストアップされていないとすれば、その論文は読むに値するものなのかも、疑 わしくなります。また、リストに載っている文献の質も重要であり、「超やさしいXXXの読み方」、「猫でもわかるYYY問題の要点」といったハウツ ーものばかりが 並んでいると、いくらリストが長くとも、減点材料となる可能性があります。

 参考文献は、著者のファミリー名のアルファベット順(日本語だけの場合にはあいうえお順でもよい)に並べ、同一著者の文献については、 西暦の年代順に配置するのが慣例です。アトランダムに書き連ねるのも、掲載ジャーナル名とか出版社でグループ化するのも、ルール違反になり ます。ただ、日本語文献と外国語文献の両方が使われている場合には、2つを混ぜるのか、2つを別々のグループにするのかを選択する余地があり ます。

 参考文献にリストアップされる1つの文献をどう記載するのかについては、専門的なジャーナルの末尾にある「編集方針」に詳しい説明があ ります。この「編集方針」はジャーナルによって多少の違いがありますので、どの専門分野でも画一というわけではありません。しかし、共通し ていることは、どのジャーナルでもルールが厳しく、あいまいな書き方を許していないという点です。出版年とか、ページ番号が脱落するような ことは論外なのです。

 参考文献のリストアップにあたっては、細心の注意が必要です。この参考文献の作成方法を解説するために、 「参考文献」における文献リストの書き方を示すことにします。

 FAQのコーナー

最後に 「よくある質問」に対してお答えすることにします。


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代表 岡部 孝好

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